笠松 紫浪 KASAMATSU Shiro 夜雨不忍池
SH-0077

モダンな東京の街並みや風情を木版ならではの鮮やかで温かみのある色彩で表現した笠松紫浪の作品です。上野恩賜公園内の不忍池を描いた作品です。奥にある建物ははっきりと描かれていますが、人物はシルエットで表現されており、夜の入り口の独特な雰囲気をうまく描写しています。灯りの配置も絶妙で、右上の灯りから人物をたどり、右下の反射光までうまく視線を誘導してくれます。

笠松 紫浪 KASAMATSU Shiro 上野公園と不忍池
SH-0076

柳を主体として描いた笠松紫浪の作品です。上野恩賜公園内の不忍池を描いた作品です。柳の芽吹き屋霧で霞む様子から、春の夕方を描いた一枚だと思われます。退色がすすんでいますが、浮世絵的な構図とカメラで撮影したかのような現在の構図とが絶妙に組み合わさった、笠松紫浪の名作です。

伊東 深水 ITO Shinsui 幕間
SH-0073

伝統的な歌川派浮世絵の流れを継ぐ「最後の美人画家」と言われた伊東深水の一枚です。伊東深水を代表する作品のひとつです。鏡を片手に髪を直す、女性らしい仕草を捉えた1枚です。髪飾りや着物の模様など細部まで丁寧に描き込んでいるため、当時の「一番のおしゃれ」を知ることが出来ます。背景には「雲母摺」という技法が施されています。これは、喜多川歌麿や東洲斎写楽の浮世絵でお馴染みの技法で、キラキラと輝く雲母の粉や貝殻の粉を使用します。これにより、摺り上がった紙の表面には、真珠のような美しい光沢が現れ、贅沢な仕上がりになっております。

伊東 深水 ITO Shinsui 岐阜提灯
SH-0072

伝統的な歌川派浮世絵の流れを継ぐ「最後の美人画家」と言われた伊東深水の一枚です。大正時代から活動していた深水ですが、昭和に入ってから渡邊庄三郎に見出され、版画作家としても活動を開始しました。提灯を掛けようとする女性の様子を描いています。「岐阜提灯」は江戸時代から続く伝統的な提灯であり、岐阜県は福岡県と並び日本における二大提灯産地とされています。伊東深水は多作の作家であり、中でも女性を描いた作品で知られています。上村松園、鏑木清方、伊東深水は「美人画の三巨匠」と呼ばれ、時代を越えて評価されています。三巨匠の他の2名の作風と比べると、さらにいえば後年の深水の作風と比べると、イラスト的なタッチで描かれています。自分の画風を版画へいかに落とし込むのかを模索していたのではないかと推量します。チギレが見られるなどやや状態は悪いですが、額装対応いたしますのでご相談ください。

吉田 遠志 YOSHIDA Toshi 淀川
SH-0071

吉田遠志は新版画の大家である吉田博の長男であり、自身も多くの作品を制作しています。大阪の淀川を描いた一枚。海外での制作を積極的に行っていた吉田遠志の作品群において、父である吉田博を彷彿とさせるような構図や色遣いが特徴的です。線の省略、大胆な構図、ストーリー性のあるモチーフなど、浮世絵を思わせる内容ですが、表現技術としては新しい時代を感じさせるモダンな作品となっています。

吉田 博 YOSHIDA Hiroshi 山中村
SH-0070

日本の風景を描いた新版画を多く残した吉田博の一作です。山中村(現在の山中湖村)から見た富士山を描いています。初版は1937年(昭和12年)の制作。真っ白な雪を冠した富士山の蒼さ、たなびく雲の後ろに見える鴇色(ときいろ)の空。富士山を主題にした作品は多数ありますが、美しい富士山の印象を色で表現したときに一番秀逸だと思われるのが吉田博のこの作品ではないでしょうか。

川瀬 巴水 KAWASE Hasui 春雨(護国寺)
SH-0069

新版画を代表する作家、川瀬巴水の作品です。昭和7年(1932)年制作。護国寺は東京の文京区にあるお寺です。1681年に徳川綱吉の命によって建設が始まりました。本堂は1697年の建立です。雨のそぼ降る護国寺の仁王門と大きな松の木をうまく構図に収めています。最奥にはピンクの差し色がみられ、おそらく桜を描いているようです。お寺に参拝するのは午前が良いとされていることから、午前中の様子を描いたものだと思われますが、すでに大きな水たまりができています。水たまりに反射した景色が描かれており、その写実的な表現が作品の特徴となっています。

吉田 遠志 YOSHIDA Toshi 野生の記録
SH-0068

吉田遠志は新版画の大家である吉田博の長男であり、自身も多くの作品を制作しています。アフリカの旅を通して制作されたシリーズは他の新版画とは一線を画しています。そのモチーフの違いもさることながら、アフリカの空気感を見事に表現した配色やタッチは、一目で吉田遠志の作品であるとわかるまでに洗練されています。象の群れを描いたこの作品は、絵本画も手掛けた吉田遠志らしく、やわらかく温かみのある一枚となっています。

ポール・ジャクレー Paul Jacoulet 塩商人
SH-0067

「塩商人」とは、塩を運搬、売買していた人々です。運搬中の大荷物とともに描かれた男性の野趣あふれる表情と、そばにある花との対比がおもしろい作品です。当時の風俗を切り取った、新版画らしいモチーフの作品です。人物画として男性を描いた作品は、新版画の中でも珍しい一枚となっています。

ポール・ジャクレー Paul Jacoulet 世界風俗版画集より「巣(朝鮮)」
SH-0066

1936年から翌年にかけて刊行されたポール・ジャクレーの「世界風俗版画集」。訪れた世界各地の風俗を色鮮やかに描いた作品は、国内外で人気を博しました。こちらの作品には、白い髭をたくわえた老人と餌を求める雛鳥が描かれています。老人は長い箸を使い、巣の中で懸命に口を開ける雛鳥たちに餌をやろうとしています。小さな命に向けるその柔らかい眼差しからは、博愛の精神を感じ取ることができます。男性を中心に描いた作品は、新版画の中でも珍しい一枚です。